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少年少女時代に強制アクセスさせる力「夜市」20230823

妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた―。奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング!魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作。「BOOK」データベースより

夏におすすめのホラーで検索したら出てきたので読んだ。

表題作の「夜市」は読み始め、本当にどこに連れていかれるのか全く分からなく、
終盤の展開、というか描きたいものが分かった時は驚かされた。
2作目の「風の古道」は特に素晴らしかった。
ファンタジーのはずなのに、みんなが持つ少年少女時代にアクセスできる力があった。

この本に収録された2作品はどちらも子ども時代への愛おしさ、郷愁、憐憫に溢れ、
そのうえで残酷な時間の不可逆性を描いている。
読んだ自分も、驚くぐらい子どもの頃に持っていた感情を思い出させられた。

懐かしいという感情は愛おしい寂しさに溢れているんだな、と思わせる力がある本だった。